【セミナー名】高齢者介護と地域包括ケアシステムの課題

【講 師】千葉 喜久也

【日 時】2018年3月28日(水)9:00~17:00

【会 場】アットビジネスセンター池袋駅前別館

 

現在の医療・介護現場には多くの間違いがある。高齢者が病気を治すために、副作用の強い薬を服用する。薬によって病気の症状は良くなるが体力が低下するため、その高齢者の生活の質は悪くなる。そもそも日本の医療は、治せないのに治そうとする医療で、それによって治らないのに治ると患者は思ってしまうのだ。介護でも同じことが言える。施設に入ることによって、歩ける人が歩けなくなったり、食べている人が食べられなくなったり、やれることが出来なくなると言うのをよく耳にする。特養利用者の8~9割が過介助による廃用状態である。介助ではなく、世話のし過ぎとお節介になっているのだ。本当の介護と言うものは、高齢者の自発性を引き出すことである。食事・入浴・掃除・運動などの生活に主体的に参加させ、生活の中で「選択」を選ばせることが、これからの介護に必要なことである。今日、何を着るのか?何を食べるのか?何時に寝るのか?健康な人たちが当たり前に生活の中で行っている「選択」を、高齢者にもしてもらうためのサポートを、これからの社会は行っていく必要があるのだ。

同時に、認知症への予防と対策も重要である。認知症の出現率は、70歳代で10%、80歳代で20%、特養では8割、要介護認定者の2人に1人が認知症である。また、若年性認知症の増加や認知症の終末期医療の対応など新たな問題も起きている。認知症をよく理解し、早期診断・早期対応、地域で支える医療福祉サービスや生活支援、人材育成が必要である。

2025年には、後期高齢者の急増、単身高齢者世帯の急増、都市部での高齢者人口の急増、要介護・認知症高齢者の急増により、財源不足や人手不足など様々な問題が起きると言われている。その問題を解決するために構築されたのが「地域包括ケアシステム」である。住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供できるような地域(市町村)での体制作りを目指している。しかし、まだまだ不十分なシステムで、解決すべき課題が多くあると感じている。病気になる前の予防、病気になってからの医療と介護、認知症の正しい理解、それぞれの本来の在り方を見直し、その地域に求められている、本当に必要なシステムを構築すべきだと私は考える。