【セミナー名】自治体人口対策としての外国人定住促進方策

【日 時】2016年12月20日(火)10:00~16:50

【会 場】剛堂会館会議堂(東京・千代田区)

 

平成26年5月、日本創成会議による人口減少問題への警告に対して、政府は地方創生本部を設置し、『ひと・まち・しごとの好循環を作る』と言う総合戦略を発表した。同時に各自治体でその総合戦略の策定を指示し、平成28年度にはその実施に入った。その中で、人口減少・東京一極集中を阻止するために、地方創生の中心は『地方に新たな仕事づくり』になった。本当に仕事が増えれば人口は増えるのだろうか。

地方に仕事を増やすために、企業は東京本部でメニューを作り、KPIやPDCAを強制し、地方版総合戦略を義務づけ、東京から専門家や人材を派遣する。これでは、東京一極集中を強化し、東京一極集中阻止のための事業を推進する、という矛盾が生じている。

人口減少の正体を探ってみる。まず、総合戦略の前半では都市化要因説が唱えられた。これは東京一極集中によって、人の生まれにくい大都市に若い人が集まりすぎているため出生率が下がり、人口が減少すると言う説だ。であるならば、地方に若い人をとどめて子育てできる環境を作らなければならない。しかし、地方には仕事がないため若い人が残らない。子どもが少ない理由も、収入がないからだと言う。よって、まずは地方の仕事づくりをする必要がある。これが総合戦略の後半で唱えられた、低経済要因説である。

しかし、この2つにはすでに矛盾がある。仕事がないから、収入がないから子どもを産めないと言うが、一極集中している首都圏では多くの仕事がある。しかし、出生率は低い。つまり、仕事があれば出生率が上がり人口が増加する、とは言えないと言うことだ。都市化が進めば進むほど経効率性は高まるが、家族や地域における暮らしの合理性は下がり、生活問題の解決力も低下する。これによって家族や地域が持つ出生力は抑えられてしまう。そもそも、出生や子育ては経済で行うものではなく、人間関係であり、家族や地域で行うものだ。例えば、専業主婦を選択している家庭は、こうしたインフォーマルな子育て力の確保を自前で行っているということになる。この場合、経済力を犠牲にして子育て力を保持しているのだから、やはりここでも仕事づくりは出生力回復には何ら関係を持たないと言える。国が進める地方創生を行っても、人口減少に歯止めはかけられないと言うことだ。

地域、自治体が集団として国から自立をし、この国の在り方を問い直す。共存し、お互いに依存し合い、かつお互いが自立してもいるような社会にする必要がある。これは国家が一方的に作るものではなく、国民が実践の内に編み出すものである。日々の実践がこの国を作り支えていることをもっと自覚することが大切だ。この自覚が今の政策に欠けているもので、これを取り戻すことが人口減少社会を乗り越えていくための大きな課題となる。