【セミナー名】第39回市町村議会 議員研修会 介護保険・新総合事業を見据えた自治体の役割
【日 時】2017年2月7日(火)9:00~15:30
【会 場】弘済会館(東京・麹町)
地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が地域の自主性や主体性に基づき地域の特性に応じて作り上げていくことが必要とされている。そして4つの新事業①在宅医療・介護連携の推進 ②認知症施策の推進 ③地域ケア会議の推進 ④生活支援サービスの充実・強化、を掲げている。そして、それぞれに市町村の課題が存在している。
①在宅医療・介護連携の推進では、市町村の役割は「地域の現状把握・連絡調整等」となっている。しかし、医療は都道府県が医療計画等を所管しているため市町村は権限がない。さらに医療分野の知識や蓄積が不足しており、医療と介護を一括して担当するセクションが市町村組織内にはない。そこでまず、市町村に責任のある担当課を設置し、医師会に委託・丸投げとならない体制にすることが重要である。次に、医療介護連携の仕組みを検討し、地域の民主的医療機関の取組みを始め、実践の中から「その市町村式」のシステムを確立する必要がある。
②認知症施策の推進では、政府・厚生労働省によれば、認知症初期集中支援チームと、認知症地域支援推進員の設置を進めている。しかし、認知症の早期診断を行う医療機関を全国に500ヵ所整備する目標にとどまり、認知症初期集中支援チームは設置目標数すらない。認知症地域支援推進員の配置目標は2017年度で全国700人、2018年度まで実施猶予期間があり、更に遅れることになる。ここで市町村に求められることは、すべての支援を要する認知症の人々に手が行き届く実効ある取組みを求め、具体的な数や体制を明確にさせていくことだ。
③地域ケア会議の推進では、「自立支援に資するケアマネジメント支援」の名の下に、ケアマネジャーの担当するケアプランを他職種協働で検討し、利用者不在のところで「不適切サービス」として抑制、要支援者・軽度者に「サービスからの卒業」を強制するような場にしないことだ。このような地域ケア会議がすでに行われている自治体では「ケアマネ1人を吊るし上げる被告席だ」などと言われている。ケアマネジャーの要請に基づき、ケアマネジャーだけでは解決できない「支援困難事例」解決のための場として位置付けること、さらに、多くの要介護者が共通して抱える困難や課題を整理し、市町村に解決策を進言する問題提起の場としていくことが重要だ。
④生活支援サービスの充実・強化では、厚生労働省は「生活支援サービス=住民の互助」と位置づけ、ボランティア等の養成・発掘等を行う「生活支援サービスコーディネーター」の配置と「協議体」の設置を行うとしている。しかし、生活支援サービスは住民だけで作り出せるものではない。市町村は制度や事業として確立し予算化する必要がある。「協議体」は、行政へ提言・問題提起・要求する権能を持った場として組織し、「コーディネーター」は地域課題の解決に必要な施策を作り出すために住民と行政のパイプ役になるよう検討すべきだ。