【セミナー名】第78回 全国都市問題会議

【日 時】2016年10月6日(木)-7日(金)

【会 場】岡山国際ホテル

 

今、アートイベントが地域に様々な効果をもたらしている。特に注目したいイベントが、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」「中之条ビエンナーレ」の2つだ。いずれもアートイベントであると同時に、少子高齢化、人口減少、過疎化、限界集落などの課題を抱える地方の活性化を目指す企画でもある。

まず、「大地の芸術祭」は、2000年に始まって以来アートとは関係のない分野において評価されている。これまでに、地域活性化センターの「ふるさとイベント大賞グランプリ(総務大臣表彰)」、総務省の「地域づくり総務大臣表彰」、国土交通省の「地域づくり表彰 国土交通大臣賞」、環境省と日本エコツーリズム協会による「第10回エコツーリズム大賞特別賞」などを受賞している。これは地域づくりの点で評価されていることを示している。総務省が進める定住自立圏構想においても創造的人材の定住・交流の促進の事例として取り上げられており、地方創生政策においても注目されている。

次に「中之条ビエンナーレ」は、2007年に始まり、2017年には6回目の開催となる。廃校の活用でも知られるイベントで、アーティスト・イン・レジデンスの実施している。イベントに参加するアーティストたちは約1か月の期間中のみならず、それに先立つ5か月を含めた半年ほどの期間を地域で暮らし創作活動を行う。子供を含めた地域住民がパフォーマンスを行い、地域住民がアートイベントの中核を担っている。このイベントは、アーティストと地域住民、鑑賞者との交流、アーティストの移住・定住を促進し、交流人口と定住人口、両方の拡大に貢献している。

この2つのイベントのように、これからのアートイベントは単なる祝祭ではなく、政治的行事・市場・まちづくりなどの役割を担っていく力があるように感じた。地元、総社市門田でもアーティスト・イン・レジデンス事業として榎忠氏による「鬼・鐵・忠-鉄をテーマに古代から現代を視るプロジェクト-」が2016年11月11日~23日で開催された。榎忠氏は、旧総社町初代町長の旧宅、池上邸をアートスペースとして改築し「総社アートハウス」と名付け、そこに定住している。空き家だった旧宅がきれいになり、総社市のアートプロジェクトの心臓部として生まれ変わったのだ。空き家問題は総社市の解決しなければならない課題のひとつだ。榎忠氏のように世界で活躍するアーティストを総社市に招き、空き家を提供し、定住してもらい、イベントを開催する。市規模でイベントを開催すれば大きな話題となり、交流人口の拡大につながる。そして、アーティストが定住すれば空き家が減り、定住人口も拡大する。空き家問題、人口減少、過疎化に歯止めをかけ、地域の活性化を進めるために、アーティスト・イン・レジデンス事業にこれから更に力を入れ、アートイベントを最大限に活用すべきだと強く感じた。