令和6年2月27日開会の令和6年2月定例市議会(現在会期中)において,上程されている2つの議案が,論議の的になっています。この議案は,昨年10月5期目の当選を果たした片岡聡一市長が一番最初に掲げた選挙公約,いわゆる肝いり政策です。
1つが議案第15号で 「食材費の高騰により,令和7年度から,学校給食費を小学生で1食60円・月額1000円,中学生で1食80円・月額1500円値上げする」もの
もう1つが議案第16号で「子育て世帯の経済的負担を軽減するため,令和6年度から,中学生の学校給食費を無償化する」ものです。この議案が可決されると,小中学生の給食費は,令和6年度は,小学生据え置き・中学生無料,令和7年度からは,小学生値上げ・中学生無料となります。一方では食材費の高騰により値上げしながら,もう一方では経済的負担の軽減のため無償化する。何か矛盾していると思いませんか。小学生だけの家庭では,令和7年度以降負担が増えることになるのです。
この議案を審査する文教福祉委員会が先日開催されました。結果は,議案第15号においては,賛成・反対同数のため委員長採決で否決,議案第16号においては,賛成1反対5で否決となりました。文教福祉委員会委員である私は,どちらにも反対しました。
反対する最大の理由は「そもそも無償化に反対」だからです。なぜ,無償化に反対かというと次の3つの理由からです。
まず1点めが,無償化すると,給食に対する興味・関心が子どもたちだけでなく,保護者からも薄れてしまうからです。興味・関心が薄れると,子どもたちは平気で給食を残すでしょう。現在も問題となっている残菜がますます増えます。残菜が増えると,子どもたちの成長の阻害となるのはもちろんですが,廃棄物処理のあらたな経費が必要になりますし,世界中で取り組んでいるSDGsにも反することになります。保護者は,仮に市が財政難で食材費をカットしてもチェックをすることさえできず,食材への意見や要望も通りにくくなります。
2点目が,ひとたび無償化すると,保護者の要望が拡大する恐れがあることです。今回中学生を対象に無償化をするのは「中学生は塾や部活動でお金がかかるためそれを軽減したいから」との市側の説明でしたが,小学生だってスポーツ少年団や塾に通っています。さらに,給食費が無償化になったのなら,今度は制服や学用品も無償化にして欲しいといった具合の様々な要望が上がってきます。こうした要望をかなえるためには,莫大な財源が必要となり,現実不可能です。
3点目が,市側はこの中学校給食費無償化を,人口増パッケージの施策と位置づけ約1億5千万円の経費を見込んでいます。しかし,給食費を無償化にしたところで,流入人口は増やせません。総社市に転入しても,待機児童がいて希望する保育所や学童保育には入りづらかったり,家を新築したくても宅地がなかなか確保できなかったりというのが現実です。中学校給食費無償化をする前に,待機児童がなくなるよう保育所や学童保育施設を整備することや,空き家活用を含めた住宅政策に注力すべきだと考えます。
私は,食材等の高騰により値上げすることで,家計を圧迫するのを仕方がないと思っているのではありません。例えば食材費の値上げ部分は市の財政で補填するとか,無償化するのではなく一部負担していただくとか,多子世帯の負担軽減のため第3子以降無償とするとか,子育て世帯の負担軽減については,様々な方法があります。今回の無償化は,未来永劫続くものです。このような政策を実行していくと総社市の貯金(財政調整基金)はあっという間になくなってしまい,未来の子どもたちに大きな借金を背負わせることになりかねません。
今回の議論は,これからの総社市を考えていくうえで,避けてはとおれない,とても大切なものです。引き続き,議員間でも議論を深めながら,閉会日(3月21日)には,議会としての最適な判断ができるように努めてまいります。