【セミナー名】自然エネルギー・省エネルギーの基本知識&導入戦略

【講 師】岡田 久典

【日 時】2018年2月6日(火)10:00~12:30

【会 場】早稲田大学大隈記念タワー

 

東日本大震災から7年が過ぎ、原子力発電の安全性が今もなお問題となっている。被災地では未だに多くの方が苦しんでおり、原子力発電を廃止しようという声が全国から強く上がったにも関わらず、なぜ原子力発電はなくならないのか。それは、原子力発電を廃止した後に不足した電力を補う政策が、十分にできていないからだと考える。この不足電力を補うために原子力発電に代わる手段として期待されているのが、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどの再生可能エネルギーによる発電である。再生可能エネルギーとは、資源が枯渇せず繰り返し使え、発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となるCO2をほとんど排出しない優れたエネルギーである。しかし、この再生可能エネルギーの普及が、欧州などにくらべ日本では進んでいない。なぜ普及しないのか再生可能エネルギーの問題点について考察する。

一つ目に、送電網が新規事業者に開かれていないことがある。日本の送電網は各電力会社が管理し、新規事業者はその送電網に接続するので、電力会社の裁量が効くのだ。二つ目に、再生可能エネルギーに適した土地が少ないことがある。日本の土地は山地や丘陵地が7割を占めているため、太陽光発電などに適していない。3つ目は、発電にコストがかかることがある。日本では、1kWhあたりの太陽光発電のコストが約10円だが、最安値のUAEでは1kWhあたり3円である。日本の太陽光発電システムの設置費用は、欧州の2倍近い。また、再生可能エネルギーによって発電した電気の買い取りは、固定価格買取制度(FIT法)によって価格が決まっている。そのため収益が自ずと固定されるため、事業者側の経営努力や技術開発などによるコストダウンがなかなか進まないのである。そして最後に、近隣住民の理解を得られにくいということがある。2016年には鹿児島県指宿市で地熱発電を導入しようとした際に「湯量の減少や温度低下の恐れがあり、損害を補償するルールもない」として温泉業界が反発し、市はこの事業の白紙撤回に追い込まれている。このように、この分野は電力会社の既得権益が守られていることや、新しい技術を取り入れることの疑念などから、発展がしにくい環境にあると言える。

しかし、再生可能エネルギーの有効活用はこの先、必ず考えていかなければならない課題である。海外で再生可能エネルギーが普及している理由に、政府や自治体が再生可能エネルギーの周知に力を入れ、そしてそれを国民が理解しているからだと考える。日本でも、国民に対して最も身近な地方議会が、再生可能エネルギーの可能性・重要性・有用性についてしっかりと説明をし、積極的に取り組んでいく地道な努力が、再生可能エネルギーの普及には必要だと確信した。