【セミナー名】第10回 2018年度 日本自治創造学会 研究会

人生100年時代の地域デザイン ~人口減少社会に向き合う地域社会~

【講 師】高橋 進・山崎 亮 他

【日 時】2018年5月10日(木)13:00~17:40  11日(金)9:30~14:55

【会 場】明治大学アカデミーコモン棟3階 アカデミーホール

1日目

講演:人生100年時代の人づくり革命 講師:高橋 進

日本は、健康寿命が世界一の長寿社会を迎えている。海外の研究を元にすれば、2007年に日本で生まれた子どもについては、107歳まで生きる可能性が50%もある。『人生100年時代』は現実的な未来だと言える。そこで、超長寿社会の新しいロールモデルを構築する必要がある。人々がどのような活力をもって時代を生き抜いていくか、そのための経済・社会システムはどうあるべきなのか。それこそが『人づくり革命』の根底にある大きなテーマである。そのためには、幼児教育や高等教育の充実で幅広い年齢層の活躍を促す必要がある。

パネルディスカッション:若者たちの挑戦-人口減少社会の地域デザイン

コーディネーター山崎亮氏により、全国で地域のために様々な活動に取り組んでいる4名をパネリストに迎え、意見交換が行われた。
山崎氏は、地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティーデザインに携わっている。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、市民参加型のパークマネージメントなど様々なプロジェクトを行っている。その経験から、「正しいだけでは若者たちは動かない、美しい・かっこいいが大切」と訴えた。また、これらの活動に総じて言えることが、資金不足である。海外では、民間企業や団体が社会・地域活動を行うと多くの寄付が集まり、活動が成り立っているケースが主流だ。しかし、日本には寄付をする文化が全く根付いていない。寄付をすると減税になるとか、何か手立てを打って日本全体でこれらの社会・地域活動を支えていく必要がある。

【パネリスト4名の紹介】

  • ごきげんファーム  伊藤 文弥氏
    障がい者の方が働く農場をつくり、農業によって障がい者支援を行っている。
  • Co-Minkanプロジェクト  横山 太郎氏
    公民館などを活用して人が集う場所、地域の”拠り所“をつくる活動を行っている。
  • NPO法人Learning for All  李 炯植氏
    子どもの貧困・教育格差をなくすための学習支援などの活動を行っている。
  • 総務省 井上 貴至氏
    地域づくりを行政で担う時代は限界、企業や大学などの力を生かす必要があると述べ、行政と民間が協力していく必要があると強調した。

2日目

講演:これからの日本をどうする  講師:佐々木 信夫

人口は増えるもの、経済は拡大するもの、所得は増え、財政も常に右肩上がりへ、こうした時代は既に終わっている。経済の豊かさが国民の生活を豊かにする、というのは高度成長期の夢を追い求めたキャッチフレーズだ。むしろ、企業の業績も伸び悩み、行政頼みになっている。これではまるで社会主義国家である。これからは経済よりも生活の質を求める時代だ。日本を変えていくためには、本当の意味での新たな国づくりが求められる。それは、これまで続いた47都道府県に代わる新たな国のかたち、10州2都市州といった日本型州構想の現実が必要だ。という持論を訴えた。とてもインパクトのある内容だった。

講演:空き家対策と活用法  講師:伊藤 明子

空き家総数はこの10年で1.2倍、20年で1.8倍に増加している。総社市でも空き家は大きな問題になっている。全国820万戸の空き家の内、問題は「その他の住宅」の318万戸である。「その他の住宅」とは持ち家ストックのこと指し、所有者はいるがなんとなく空いている住宅のことを言う。空き家対策は、地域特性に応じた対応が必要になってくる。なぜ空き家になったのか、どういった状況と課題があるのかは地域によって全て異なってくる。新しく制定した特別措置法によって、市町村が空き家対策を進める枠組みが整い、様々な空き家対策を市町村で推進することになる。総社市でも、空き家になった原因・現状をよく研究し、本当に効果のある空き家対策を行う必要があると強く感じた。